海外から日本のNetflixを見たいのか、フリーWi-Fiを安全に使いたいのか
6社の公式サイトに何が書かれているかを確認しました(確認日 2026.8.27)
VPNの比較サイトを見ると、6社が同じ表に並んでいます。料金、サーバー数、同時接続台数。どれも同じ項目で比べられていて、あとは値段で選べばいいように見えます。
ただ、公式サイトを一社ずつ開くと、様子が違います。同じ「VPN」という名前で売られていますが、何のために作られたかが分かれています。
6社の公式サイトが最初に言っていること
トップページを開いて、最初の見出しに何と書いてあるか。それだけを並べます。
- MillenVPN:海外から日本のWEBサービスや動画配信サービスに接続するなら
- Glocal VPN:世界中から日本の動画をスマート鑑賞
- セカイVPN:いろんな国のIPアドレスが使えるVPNサービス
- スイカVPN:外出先でWi-Fi使うなら。危険なWi-Fi環境からあなたを守ります
- NordVPN:最も優れたVPNサービスが、さらに進化しました。次世代のウイルス対策が内蔵されました
- ExpressVPN:世界No.1のVPN。オンラインのプライバシー、セキュリティ、自由をすべて叶えるオールインワンアプリ
上の2社は、海外から日本の動画を見ることを見出しに書いています。下の3社は、通信を守ることを書いています。セカイVPNはその中間で、技術の説明になっています。
サービス名を挙げているのは2社
もう少し中を見ると、差がはっきりします。
MillenVPNは、対応サービスの一覧を「グローバル」と「日本」に分けて載せています。日本側にはTVer、DMM、U-NEXT、ABEMA、ニコニコ動画、WOWOW、TELASA、radiko、dアニメストア、FODプレミアムなど16のサービスが並んでいます。一覧の下には、一部の国からの接続には別のオプションが必要であること、通信事情や国際情勢の変化によって内容が変わる場合があることも書かれています。
Glocal VPNは、よくある質問の中でNetflix、ABEMA、TVer、Amazon Prime Video、YouTube、DAZN、U-NEXTなどを挙げたうえで、ここに記載のないサイトでも基本的に利用でき、視聴できないサイトがあれば問い合わせてほしい、調整すると書いています。
セカイVPNは、海外から日本国内限定のサービス(動画やラジオなど)を利用したい方、という書き方をしています。サービス名は出てきません。
スイカVPN、NordVPN、ExpressVPNの3社は、日本の動画配信サービスについて、公式サイトに記載がありません。スイカVPNは公共Wi-Fiでの盗聴対策、NordVPNはウイルス対策とダークウェブの監視、ExpressVPNはパスワード管理やメール保護を含むアプリとして説明されています。
技術ではなく、書いてあるかどうか
念のため書いておくと、これは性能の話ではありません。
VPNの仕組みはどこも同じです。日本のサーバーを経由して、日本のIPアドレスでアクセスする。それだけです。実際、セカイVPNの公式には対応する接続方式としてPPTP、L2TP、OpenVPN、IKEv2、OpenConnectが並んでいて、MillenVPNが規制の厳しい国向けに案内しているのと同じものが含まれています。技術としては、どの会社でも同じことができます。
違うのは、公式サイトにそう書いているかどうかです。
サービス名を挙げるということは、そのサービスが見られなくなったときに逃げられないということでもあります。MillenVPNが「内容が変更となる場合がある」と注記を付けているのも、Glocal VPNが「調整させていただきます」と書いているのも、そこに名前を出した以上、変わったときに何かする立場にいるからです。
名前を出していない会社にとって、それはそもそも案内していない使い方です。
口コミで見られたという話について
NordVPNやExpressVPNで日本のNetflixが見られた、という報告はあります。技術としてはどこも同じことができるので、実際に見られることは多いはずです。
ただし、それは各社が自分で書いていることではありません。
見られたという報告は、次も見られるという話ではありません。
動画配信サービス側は、VPN経由のアクセスを継続的に弾いています。しかも一度きりではありません。VPNの接続先が変われば向こうもそれを検知して弾き、また別の接続先が用意される。これが繰り返されています。実際に使っていると、昨日まで普通に見られていたものが今日は開かない、ということが珍しくありません。「VPN 繋がらない」「Netflix VPN 見れない」といった検索が多いのは、そのためです。
つまり、弾かれることは例外ではなく、前提です。
ただし、弾かれたまま戻らないわけでもありません。VPN側も接続先のIPアドレスを入れ替え続けているので、今日繋がらなかったものが、翌日には繋がることもあります。しばらく時間を置いてから試す、というだけで解決する場合もあります。慌てて解約する必要はありません。
問題は、弾かれたときに次の手が用意されているかどうかです。
MillenVPNは、通常のアプリとは別に MillenVPN Native というオプションを無料で用意しています。アプリで繋がらないときは、そちらに切り替えれば繋がります。中国のように規制が厳しい国からの接続についても、OpenConnect という方式を公式に案内しています。弾かれることを前提に、最初から逃げ道が作ってある構造です。
Glocal VPNは、視聴できないサイトがあれば問い合わせてほしい、調整すると書いています。こちらは一度連絡が必要ですが、弾かれたときの窓口が示されています。
公式サイトに日本の動画配信サービスの記載がない会社では、弾かれたときにどうするかも書かれていません。自分で接続先を変えて試すか、繋がる方法を探すことになります。
口コミは、弾かれる前の記録です。
困ったときに聞く先があるかどうか
実際にあったことを書きます。
海外から日本のDMMに接続しようとして、弾かれたことがあります。MillenVPNのサポートに問い合わせたところ、通常の接続方式に加えて、MillenVPN NativeとOpenConnectを使う方法を含めた3つの接続方法を案内されました。問い合わせたのが18時54分、回答が来たのが翌朝9時1分でした。
このとき効いていたのは、サポートの速さよりも、DMMが対応表に載っているサービスだったということだと思います。載っているから、その前提で回答が来ました。
同じことを、日本の動画配信サービスについて何も書いていない会社に聞いた場合にどうなるかは、確認していません。分かるのは、公式サイトに書かれていない使い方について聞くことになる、ということだけです。
見たいサービスが決まっているなら
TVerが見たい、DMMが見たい、というように対象が決まっているなら、その名前を公式サイトに書いている会社から選ぶのが確実です。現時点で日本のサービスを名前で挙げているのは、MillenVPNとGlocal VPNの2社です。
ただし、Glocal VPNはサーバーが日本にしかありません。海外から日本のサービスを見るという使い方であれば問題ありませんが、日本から海外のサービスに繋ぎたい場合は対象外です。
他の会社で見られないという意味ではありません。ただ、見られなくなったときに聞く先がありません。
外出先や海外のフリーWi-Fiを安全に使いたい、という目的であれば、話は逆になります。スイカVPN、NordVPN、ExpressVPNはそこを正面から説明していますし、NordVPNとExpressVPNの上位プランにはウイルス対策やパスワード管理も含まれています。
同じVPNという名前で売られていますが、選ぶ前に決めることは「どこが安いか」ではなく「何に使うか」です。
この記事で確認していないこと
各社が自社サイトに載せている他社との比較表は、その会社に有利になるように作られています。
MillenVPNは他社との比較表で、自社の欄にすべてチェックを付けています。スイカVPNは他社との速度比較表で、MillenVPNの欄を「中国からの接続ができない」として棒グラフから外しています。ただしMillenVPNの公式サイトには、接続可能な国・地域の筆頭に中国が挙げられており、規制の厳しい国からの接続方法として OpenConnect が案内されています。実際に中国から接続できることも確認しています。
どちらの表も、自社に有利な形で作られていると考えたほうがよさそうです。
この記事で確認したのは、各社が自分のサイトに何を書いているか、それだけです。対応表に載っているサービスが実際にすべて見られるかどうかは確認していません。
契約する前に確認しておきたいこと
- 見たいサービスの名前が、その会社の公式サイトに書かれているか
- 書かれていない場合、繋がらなくなったときの案内があるか
- 自分の目的が、日本のサービスを見ることなのか、通信を守ることなのか
どのVPNも、技術としては同じことができます。ただ、何のために作られたかは分かれています。公式サイトに書かれていないことは、その会社が案内していないことです。契約する前に、自分が使いたいサービスの名前がそこにあるかどうかを見てください。